店舗や事業所などが必要ないため、初期費用をリーズナブルに抑えやすい印象のあるネットショップ。オンラインのやり取りが中心なので顧客との連絡ツールも豊富ですし、実際に並べてアピールするよりもよりたくさんの商品を見てもらえる機会が多そうですよね。
しかし、実際には「開業したはいいけれど上手くいかなかった…」と肩を落とす経営者も大勢います。一体なぜそうなってしまったのでしょうか?今回は具体的な失敗談も取り上げつつ、ネットショップ経営の注意点を探ってみましょう。
色々なケースがある!ネットショップ開業の失敗談
まずは、ネットショップ開業の失敗についてありがちな例をいくつかご紹介します。業種としては「アパレル」や「健康食品」。どちらもネット商材としては定番ですね。
ケース① 原価や経費が高すぎたアパレルショップの例
元々は小売業に勤めていたAさん。その中でネット経由の注文が増えていることを感じ、自身もアパレルショップ経営に乗り出したそう。はじめの売れ行き自体は好調で、顧客からの手ごたえも感じていました。
しかし、問題は「利益率が非常に低かった」こと。売上そのものは良好に見えるのに、手元に残るお金が少なかったのです。広告費を惜しまず投入し、値下げキャンペーンをはじめとする顧客ファーストの姿勢で売上を伸ばしすぎたために、割に合わない結果となってしまったのですね。
ケース② 顧客のニーズを誤解したアパレルショップの例
アパレル系でよくある失敗例として「顧客ニーズに合った服を提供できない」というものがあります。Bさんのお店も元々は他にはないこだわりの商品を置きたい、と考えていましたが、なかなか服が売れず失敗。やむなく閉店となりました。
ネットショップで人気のアイテムは、一般的に「知名度が高くて高価なブランド品」や「知名度は低いけれどそこそこの質で安い」もの、「実店舗である程度の質が分かっている」もの。いかに質が良くても、ブランドを知らない、直接触れない状態だと手が伸びにくいということを押さえておく必要がありそうです。
ケース③ 意外と競合が多かった健康食品ショップの例
健康食品を販売するネットショップを運営していたC社。商品がメディアに取り上げられることもあり、順調に売れているように思えました。しかし、最終的には大赤字となってしまい、事業を畳むことに…。
原因としては「他社との差別化を図れなかった」ことだと言われています。ネット商材として選ばれやすい(向いているとされている)ものはその分競合も多く、特別な魅力がなければ埋もれてしまうのです。
ネットショップ経営のよくある勘違いとは?
このように、最初は上手くいくように思えても途中から失速した、というケースは多々。なぜ掴みは良いのに、あるいは最大限努力したのに顧客の心を掴めなかったのでしょうか?
では、ネットショップを開業する上で「よく勘違いされやすいこと」を見てみましょう。こういった意識があり、かつ今後ネットショップの開業を検討している方は要注意です。
・広告費やCEO対策で、集客できれば売れるはず ・質の良い商品、魅力がある商品を用意できれば売れるはず ・たくさんの人に商品が届けば、全体的な売上も高くなるはず
いかがでしょうか?一見真っ当な価値観に感じられますが、実はこれはすべて間違い。正確には「それだけではネットショップの成功には繋がらない」と言えるでしょう。
ネットショップは「集客」から「リピート販売」、そして「客単価を上げる」のが基本
もちろん、お客様が自社サイトに訪れなければ意味はありません。そういう意味で集客を重視するのは間違いではないのですが、ネットショップの場合はそこから興味を惹き、商品を購入してもらう、という段階が必要。そして意外と、サイトに来るだけで購入に至らない顧客の割合は大きいのです。
そのためには「顧客が関心を持てそうな商品を置く」「問い合わせや購入手続きを行いやすいようにサイトを工夫する」といった工夫をしなければなりませんよね。ただ、質の高い商品であっても前述したアパレルショップの失敗例の通り、ネットで魅力が伝わりにくければ顧客には届かないため、キャッチコピーや広告での宣伝やサンプルの配布など、分かりやすく伝わるような施策が重要です。
そこでリピーターになってくれる顧客の数が増えたら、今度は「LTV(顧客生涯価値)」アップを狙います。商品の出荷数が多いと「ものすごく売れている」気がしがちですが、それぞれの単価が低ければ配送コストばかりかかってしまい、純利益としてはマイナスなことも。定期的に商品を購入してくれる安定した顧客の獲得が、ネットショップ経営においては大切なのですね。
ネットショップ経営には「広告費」と「固定費/変動費」への理解も重要!
ネットショップ経営においては「広告費」が非常に重要です。例えばショッピングセンターや百貨店に入っているお店であれば、その場所自体に目的を持って来た人が自然と店舗を覗いてくれる可能性もありますよね。
しかし、ネットだとそういった商圏が存在しないため、自社サイト(言うなれば路面店)に誘導するための施策が必要です。
◎代表的なネット広告媒体
・バナー広告 ・アフィリエイト ・FacebookやTwitterなどのSNS広告 ・リスティング広告(Google検索ページ上で、ユーザーの検索ワードに関係する言葉が掲載される仕組みの広告。 クリックされるとGoogleへ支払う広告料が発生)
上記はそれぞれ費用が異なりますが、アプローチできる層も変わってきます。若者向けならSNS、ターゲットを特に絞らないならバナー広告など施策の方法は様々ですから、適切に計画したいですね。
◎「固定費」と「変動費」を把握できないことによる失敗も多い
ネットショップは店舗が存在しないため、仕入れ以外の経費はほぼ必要ないのでは?と考える人もいるかもしれません。ですが、ネットショップ経営の場合でもしっかりと固定費が発生します。
・ネットショップの代表的な固定費
サーバーの月額利用料 システム利用料(マーケティングツール等) クレジット契約料
上記の固定費に対し、仕入れをはじめとする経費は「変動費」です。
・ネットショップの代表的な変動費
仕入れ代金(梱包材含む) 仕入れに必要な税金等 商品の運賃
注目すべきは「固定費と変動費を毎月正確に把握し、最低限の売上を確保できるか」ということ。売れている間は軌道に乗ったような気がしてポジティブに考えてしまいがちですが、いざ予想以上に利益が上がらなくなると不安になり、そこで初めて固定費と変動費が高すぎることに気付く、というパターンもあるようです。
ネットショップ開業を失敗しないために
ネットショップはパソコンと商品さえあれば誰でも始められるものではなく、営業戦略や仕入れ戦略、広告戦略など数多くの視点からどう売るか?と知恵を絞らなければなりません。そこで、今回の失敗例や原因を参考に、失敗しないためのポイントは何なのかを考えてみましょう。
⒈対象ユーザーに適したアプローチを検討し、広告を打つ
⒉顧客目線での商品展開を行い、魅力を分かりやすく伝える(伝えやすい商材を選ぶ)
⒊メールや同梱物など、丁寧な対応とフォローでリピーターを増やす
⒋経費を正しく把握し、売上目標を立てる
顧客を獲得するためにはユーザー目線での経営が必要不可欠ですが、あまりにも注力しすぎるとコストが上回って身を滅ぼす恐れも。経費と売上のバランスを見て、健全な経営ができるといいですね。