ネットショップを運営する方にとって重要なのが「売上」だと思います。しかし、売上がいくら高くても、「利益」が出なければ品質は維持できませんし、継続に無理が出てくるでしょう。
では、利益率が高いネットショップにするためには、一体どのような点に気を付ければ良いのでしょうか?今回はネットショップの利益率の算出方法をふまえ、詳しい経費や値入れのポイントなどもふまえつつご紹介しましょう。
利益率は、対象となる利益の種類によって計算方法が変わる!
利益率は、主に売上高に対する利益の比率(営業利益)のことで「利益÷売上高×100」という公式で割り出すことが可能です。利益は売上から費用を引いたものを指し、売上高が大きくても利益率が低ければ儲けは少なくなる傾向があります。
ただし、利益率は「対象となる利益の種類によって数値や計算方法が変わることもある」と覚えておいてください。
利益には粗利益から販売費、および一般管理費を差し引いた営業利益の他にも、売上高から売上原価(仕入原価)を引いた売上総利益(粗利益)や、営業利益から本業以外の損益である営業外収益・営業外費用を差し引きした経常利益、税金までを差し引いた最終的な利益である当期純利益などが挙げられ、目的に応じて使い分けられるのが一般的です。大抵は営業利益か売上総利益のことを指すものと言われていますが、念のため知っておくと混乱が少ないでしょう。
意外と多い!ネットショップの利益率を決める経費とは?
ネットショップの利益を算出する際、売上から差し引かれる代表的なものといえば「原価」や「仕入れ値」ですよね。しかし、販売形態によってはそれ以外にも多くの経費がかかる場合もあるため、注意しておかなければなりません。経費の全体をしっかり把握しておかないと、利益率は高いのに赤字、なんて結果になる恐れもあるようです。
◎ネットショップの主な経費一覧
・原価(仕入れ値) ・Webマーケティング費用(広告費やSEO対策) ・仕入れや発送にかかる送料 ・決済手数料(クレジットカードや代引き) ・販促費用(DMやチラシなど) ・ポイントの負担 ・梱包代金や倉庫の管理費 ・事業所の家賃や水道光熱費、人件費 など
専用の事業所を借りるかや従業員を雇うかでも変わってきますが、ざっと挙げただけでも様々な経費が必要となることが分かります。“ポイント負担”は商品を購入するごとにポイントがつくサービスを提供すると生じるもので、割引を行うための金額を加盟店が支払うという仕組み。オリジナル商材を取り扱うネットショップだとあまり見かけませんが、ポイント還元サービスを導入する場合は気を付けておきましょう。
適正価格はいくら?利益を高めるには「値入れ」も大事!
利益率を考える上で、重要なもののひとつが「値入れ」です。これは“商品販売価格”の中に含まれる利益のことを指し、あらかじめ利益を予想して商品の販売価格を決めること、とも言えるでしょう。
オリジナル商材を扱うネットショップにおいてはある程度自由に設定できる分、価格設定は純利益を左右するポイントになります。利益率が高くても単価が低いと売上は伸び悩む恐れがありますが、逆に単価が高すぎても売れにくいですから、慎重にバランスを見なければなりません。
では、販売価格を決めるために参考となる公式を見てみましょう。
・販売価格=原価÷(100%-値入率)
例えば、500円で仕入れた商品に30%の利益を乗せて売りたい、とします。このケースを上記の公式に当てはめると「500÷(100%-30%)=714円」となりますね。
販売価格を決めるポイントは「数字管理」を行うこと!
ただ、上記の公式で販売価格を決めるためには、そもそも仕入れ価格に対してどの程度の利益を付加するか、を考えなければなりません。そのため、前述した経費や現状かかっている広告費などをふまえて正確に「数字管理」を行い、いくらなら経営を維持できる利益を出せるかを把握する必要があるでしょう。
また、単価は高くても低くても問題が起こりやすいとお話しましたが、そもそもの適正価格を知るには「市場調査」が必要不可欠。実際に売れている同業他社の商品を調べ、どの程度の値段で売れているのかを見てみてください。
同業他社の情報からは、自社の商品を購入してくれるかもしれないターゲット層の姿も窺えます。ニーズに合った年齢や性別、予算などを確認すると、ある程度の設定金額が分かってくるのではないでしょうか。
ネットショップにおける平均的な利益率は?利益率アップのポイント!
利益率を上げると言っても、自社サイトがの利益率が一般的に見てどの程度なのかを知らなければ目標値がよく分かりませんよね。
では、ネットショップにおける平均的な利益率はどのくらいなのか?というと、経済産業省が2007年に発表した「商工業実態基本調査(https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/syokozi/result-2/h2c5kaaj.html)」によれば、小売企業における売上総利益率は中小企業で29.1%、大企業が26.4%となっています。現在はこの時よりネットショップも普及していますし、商材や店舗の規模などによって変化するところもあると思いますが、ひとつの目安として考えてみると良いでしょう。
ちなみに、傾向としては「原価を抑えやすく、商品価格を自由に設定できるオリジナル商品」は利益率が高く、ブランド化粧品や電化製品は利益率が低い商品の代表格とされています。特に電化製品は利益率が5%程度になることもあるとのことですから、自社製品にふさわしい利益率はどのくらいなのか、も視点に入れる必要がありそうですね。
利益率アップには「原価」や「単価」、「販売方法」の見直しが必要
では、利益率を上げるためにはどういった工夫ができるのか、というと、最も簡単なのは「単価を上げて、原価を下げる」方法です。ただし、既に商品の価格を設定した状態で値上げするのは顧客からの信頼度にも繋がり、リスクが大きいため、最初の販売価格は注意して決めましょう。
その他にも、以下のような点を見直すことで利益率アップを図ることが可能です。
セット商品を作る
利益率が高い商品と低い商品が存在する場合、その2つを「セット」で売ることで全体の利益率が改善することがあります。ポイントは、顧客にセット買いのメリットを上手く宣伝すること。双方の商品に関連性を持たせ、一緒に買った方が便利!というイメージを与えられるようにしましょう。
リピーターを増やすための施策を行う
購入後のお礼メールやDMの発行、2回目以降買ってくれた人への購入特典など、リピーターを増やすための施策を行うのも有効。リピーターが増えれば新規顧客に頼りすぎなくて済むため、広告費を削減できる可能性もあります。
客単価を上げる施策を行う
顧客1人1人の単価を上げる、というのも大切な施策です。例えば関連商品を勧める「クロスセル」や、よりグレードの高い商品を勧める「アップセル」、ギフト商品(プレゼントにはある程度の金額を使う人が多いことから)の提案などを行うのが一般的ですが、“松竹梅の法則”を利用する、という手もあります。
松竹梅の法則とは「3段階の値段設定を用意されると、たいていの人が真ん中を選ぶ」とされる理論。セット商品を新たに設ける場合は、この法則を参考にしてみると良いかもしれませんね。
原価のみを下げる
最後に、途中からの値上げは難しくても「原価のみを下げる」方法であれば、無理なく利益率を上げられる可能性があります。例えば仕入れ数が増えるほど割引を受けられる商品があるなら、一度にたくさん仕入れた方が原価は安くなりますよね。かといって品質をダウンさせるのは得策ではありませんから、あくまでも質は維持する方向性で、よりコストを削減できるやり方を模索しましょう。