コーズマーケティングはもう古い!?課題や成功ポイントとは

自社の商品やサービスを通じ、環境保護や社会貢献に繋がることをアピールする「コーズマーケティング」。コーズは和訳すると“社会的大義”と言い換えられ、言うなれば自分の消費活動が社会的に大きな影響をもたらすのだ、と自覚してもらうことで企業イメージや商品イメージをアップさせるマーケティングと言えるでしょう。

コーズマーケティングは実際に環境保護や社会貢献にも結び付くものですが、商品の購入によって寄付的な活動ができることから、消費者の購買力を後押しする効果も期待できると言われています。つまり、上手くいけば売上アップも見込める、というわけですね。

しかし、中にはコーズマーケティングは現代には適さない取り組みだ、との声も。そこで今回は、コーズマーケティングとは何か?について詳しくご説明するとともに、これからの課題や成功ポイントなどをご紹介しましょう。

目次

意外と歴史が古い!コーズマーケティングの目的は?

コーズマーケティングの歴史を遡ると、1976年のアメリカでホテル大手のマリオット・インターナショナル、および乳児の死亡や早産などを減らし、母子の健康を改善することを目標に活動する慈善団体であるMarch of Dimesが協力し合って実施したキャンペーンが挙げられます。

その後、概念として世界に広がったのは1983年のこと。世界的なカード会社として知られるアメリカン・エキスプレスが掲げた「自由の女神修復プロジェクト」が発端です。これはカードの発行、もしくは1回の利用ごとに、自由の女神像の修復資金アメリカン・エキスプレスが1セントを寄付するというプロジェクト。期間中アメックスでは約30%のカード利用向上に成功したと言われており、結果的に170万ドルの寄付が集まりました。

コーズマーケティングの目的は前述した通り売上をアップし、企業イメージを向上させることだと思われていますが、実際には様々な目的が存在します。では、それ以外に一体どのような目的があるのか、詳しく見ていきましょう。

目的① 環境保護・社会貢献を果たすこと

マーケティングという名が付いていますが、まずは現実的に環境保護・社会貢献に対して高い意識を持っていなければ、その企業は信頼されません。そこで重要なのが「自社と関連性の深い環境・社会的な課題を探す」こと。

継続的なものでなければ、現在災害や感染症などでひっ迫している地域への支援、といった選択肢もあるかもしれませんが、自社にとっても関連性のある課題に尽力することは、コーズマーケティングにおける信頼度を向上させるのはもちろん、経営面でもプラスに繋がるはずです。

目的② 非営利組織を助け、認知度を向上させること

取り組むべき課題が決まったら、それに向けて真摯に活動を行っている非営利組織と協力し合うのも効果的です。これによって非営利組織の目的や社会的な課題を世に周知することができますし、これまで目が届きにくかった消費者へのアプローチにもなるでしょう。非営利組織にとっても、活動を助けてくれるパートナーを得られることはメリットが大きいと言えます。

目的③ 社員や販売スタッフの意識を変えること

社員や販売スタッフの中には、環境保護や社会貢献に対して今ひとつピンと来ない人もいると思います。しかし、コーズマーケティングを行うことで自社製品の販売が寄付に繋がる、という意識を高め、ひいては働くことへの誇りやモチベーションの向上も期待できるでしょう。

目的④ 社会貢献に対する意識の高い、新たな顧客層を惹きつけること

コーズマーケティングは、現在商品を購入してくれている顧客たちの環境保護・社会貢献への意識を変えるだけでなく、既にそういった課題に対して様々な意欲を持った新たなる顧客へのアプローチにも有効とされています。

環境への配慮や社会貢献への意識がしっかりした企業、というイメージが付けば、更に幅広い顧客獲得に繋がる可能性もある、というわけですね。

日本ではあまり広まっていない?コーズマーケティングの課題

このように、コーズマーケティングは様々な意味で企業にプラスイメージをもたらす取り組みであることが分かります。しかし、そのいっぽうで日本では大企業における事例は見られるものの、市場全体を見るとさほど広まっていない、との声も。一体なぜなのでしょうか?課題と思われる点について、具体的に考えてみましょう。

課題① 短期間では変化を生み出しにくい

コーズマーケティングは企画から実施まで様々なコストがかかるため、一般的には期間限定、あるいは商品やサービスを限定して行う傾向があります。しかし、短期間ではなかなか寄付が集まりにくく、意気込んで取り組んだ割には成果が小さい…と感じる企業が多いようです。

期間限定でも盛り上がる企画を考えるのは難しいですし、長期戦で行うとなれば「10年は様子を見た方が良い」とも言われるほど気の長い話になりますから、確かに余程安定した企業でなければチャレンジしにくい向きはありそうですね。

課題② コスト的なリスクがメリットを上回りにくい

コーズマーケティングは、成功した時のメリットも大きい取り組みではありますが、万が一の時のリスクも考えておかねばならない施策です。例えば寄付の割合が大きすぎてコストばかりかかってしまったり、後述するように逆に企業イメージを損ねてしまったり…などが挙げられます。

寄付先や協力する非営利団体についてのリサーチをはじめ、手間がかかるものでもありますから、人件費的な意味でもハードルが高い部分はあるでしょう。

課題③ 利益目的の取り組みと思われ、ネガティブイメージを持たれる恐れも

環境保護や社会貢献を本気で解決したい、という気持ちが根底にあっても、消費者の中にはこういった活動を行っているだけで「偽善的だ」と捉えてしまう人が一定数います。ネガティブイメージを持たれないよう、プロモーションを工夫しなければならないのもコーズマーケティングの課題のひとつと言えるでしょう。

成功に繋げるには?コーズマーケティングのポイント

では、コーズマーケティングを効果的に進めるにはどのようなポイントを押さえれば良いのでしょうか?

ポイント① 自社の価値観に合うキャンペーンを考える

前述した通り、コーズマーケティングは自社と何の関わりもない社会問題に切り込んでも、消費者を戸惑わせる恐れがあります。事業内容や商品と照らし合わせ、無理なく関連性が確認できるキャンペーンを検討しましょう。

ポイント② 競合他社の取り組みを確認し、差別化を試みる

既に競合他社もコーズマーケティングを行っている場合、取り組みの内容が被るリスクもあります。類似のキャンペーンではなく、更に一歩踏み込んだ内容を企画することが大切です。

ポイント③ 寄付の数字は分かりやすく表現する

消費者に対して寄付の内容を説明する際「収益の一部は○○に寄付いたします」といった表現をされていることがありますよね。しかし、この言い方だとどれだけ役に立っているか分かりにくく、購買意欲を低下させてしまうことも。例えば「商品100円につき1円を寄付いたします」という風に、具体的な数字を示した方が良いでしょう。

ポイント④ パートナーや寄付先は慎重に選定する

非営利組織をはじめ、協力してくれるパートナーを探す際には、その団体の背景や活動内容、評判などをリサーチした上で、担当者とよく話し合う必要があります。せっかくの支援金が悪用されるリスクもゼロではありませんから、寄付先も慎重に選定してください。

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