自社商品のマーケティングを行う際、多くの企業では顧客の「ペルソナ」を作成し、どういったターゲット層に響くのかを検証します。そこで、より深く理解を深めるために効果的とされている施策が「カスタマージャーニー」です。
カスタマージャーニーは顧客の旅、と訳されるように、商品購入までのプロセスを時系列化し、詳しく分析(カスタマージャーニー分析)することを言います。
テレビや雑誌、ラジオが主要メディアであった従来はペルソナも比較的設定しやすかったものの、ネットが普及した現代では顧客が複数のチャネルを渡り歩いて情報を収集するのが当たり前となっているため、こうした細やかな分析によって顧客接点の視野を広げなければならないのですね。
では、カスタマージャーニーの具体的なメリットとは何なのか?をはじめ、分析方法やポイントなどについて詳しく見ていきましょう。
意識の共有にも役立つ!カスタマージャーニーのメリット
カスタマージャーニーを実施することで得られるメリットは様々。では、一体どのようなものが考えられるのか、具体的に見てみましょう。
メリット① 顧客目線に立つことで、効果的な改善策を見いだせる
商品開発やマーケティングは顧客目線で、というのはビジネスの基本ではありますが、実際に施策を検討する上で完全に顧客に寄り添うことは難しいものです。なぜかといえば一般的な施策はWebや店頭、広告など役割別に担当者が決められているケースが多く、視点が偏りがちになってしまうから。
その点、カスタマージャーニーはまず具体的な人物像(ペルソナ)を生み出し、複数のチャネル利用を前提にストーリーを構成するため、より深く顧客を理解しやすいと言えます。
メリット② 顧客の満足度アップに繋がり、ブランド力が向上する可能性も
カスタマージャーニーは、前述した通り深く顧客を理解するために効果的。つまり「顧客が求める商品やサービスは何か?」を細やかに見出しやすいので、満足度アップに繋がる可能性も高いと言えるでしょう。
自社への愛着を深められれば、ロイヤルカスタマー(優良顧客)の育成、ひいてはブランディングに影響する可能性もあります。
メリット③ 様々な担当者の間で、認識のすり合わせをしやすくなる
マーケティングは担当者ごとに視点が異なると、それぞれが想定する顧客への認識のズレも生じやすくなります。しかし、カスタマージャーニーマップの作成によって具体的なターゲット像を可視化できれば、認識を統一させることが可能です。横の繋がりが強固になると、マーケティングの効率も良くなりそうですね。
メリット④ 施策の優先順位(KPI)が分かりやすくなり、意思決定が迅速に
ペルソナの作成は、効果的なKPI(重要業績評価指標)の設定にも役立ちます。具体的な人物像があれば「この目標を達成するためには何が必要か」が明瞭になりますから、施策の優先順位を決めやすく、迅速に意思決定を行えるようになるのです。
主人公(ペルソナ)はどんな人物?カスタマージャーニーを作成してみよう
では、カスタマージャーニーの主人公となる「ペルソナ」から実際に作成してみましょう。キャラクターだけでなく、どのような道筋を辿って自社の商品やサービスにたどり着くか、も重要になってきます。
ステップ① ペルソナを作成
ペルソナは、既存事業であれば実際の顧客データを活用するのが最適です。新規事業であれば定性・定量調査(アンケートやインタビューによる調査)の結果をもとに、ターゲットになりそうな顧客をグループ化し、ユーザーインタビューやアクセス解析、購買履歴データなどからその枠組みごとのペルソナを作成しましょう。
◎ペルソナの情報例
・氏名 ・年齢 ・居住地 ・家族構成(既婚/未婚・子どもの有無など) ・勤務先(業種・役職・会社の売上高など含む) ・学歴 ・収入 ・趣味 ・人間関係 ・仕事上の目標 ・性格 ・よく利用するSNS ・所持している端末 ・現在の悩み・状況 など
その② カスタマージャーニーのゴールを決める
ペルソナができたら、カスタマージャーニーによって到達すべきゴールを設定します。マップを効果的に活用するには、問い合わせまで、購入まで、リピート購入までなど具体的な到達点を決めることが大切です。
ステップ③ 想定されるアクションを時系列順に並べる
次に、ゴールに合わせてマップの枠組みを作りましょう。カスタマージャーニーは縦軸と横軸からなる表を作成するのが一般的で、縦軸には「ユーザーの思考や行動」、横軸には「ユーザーが辿るステージ」が入ります。
・縦軸:行動(SNSの閲覧、試着など)/タッチポイント(顧客との接点)/思考・感情(どこのブランド?自分が使ったらどう見える?など)/課題(値段は高くない?本当に自分に似合うか不安…など) ・横軸:認知・興味(商品やサービスを気になっている段階)→情報収集・比較検討→来店・販売サイトへのアクセス→購入
◎ポイントは、そのアクションによって生まれる「感情」を想像すること!
表を作ったらあとは埋めていく工程に入りますが、ここでポイントとなるのが「ユーザーが各段階においてどのような感情・考えを持つのか」を詳しく想像すること。
感情は例えば「欲しい!かわいい!かっこいい!」など、商品やサービスに対する感想。考え(思考)は「人からどう見られるだろう?自分に合っているだろうか?購入した後どう使うか?」といった必要性を考慮するものです。プラスとマイナス、双方の意見を想定し、気分の上がり下がりをグラフ化すると更にリアルなマップとなるでしょう。
ステップ④ 顧客情報を収集し、タッチポイント(接点)となるチャネルを探る
自社と顧客のタッチポイント(接点)を探るのも、カスタマージャーニーにおける重要な分析です。どこでサービスを知り、どのような情報収集によって好感、あるいはマイナスイメージを持つのかをしっかり考えましょう。
サイトやSNS、口コミなど自社を知るきっかけはペルソナの年齢や行動範囲によっても変わってくるでしょうから、キャラクターに応じたリアリティを追求したいですね。
注意点を押さえて!カスタマージャーニーのポイント
とはいえ、カスタマージャーニーにも注意点はあります。作成の際は以下を把握し、ポイントを押さえて分析を行うようにしましょう。
注意点① 作成に手間と時間がかかる
まず、マーケティングに活かせるカスタマージャーニーを行うには、顧客の動向を細かく調査する必要があります。特にアンケートやインタビュー、モニター調査などをふまえる場合には時間と手間がかかるため、実施の際は念頭に置いておかなければなりません。
注意点② 効果測定までの根気が求められる
カスタマージャーニーは分析そのものにも手間がかかる上、結果が出るまでにも時間を要する傾向があります。その効果がカスタマージャーニーマップによるものだ、と断言することも難しいので、効果測定自体がやりづらいとの声も。
注意点③ 担当者の都合に左右される恐れがある
カスタマージャーニーマップは基本的に顧客データや調査結果に基づいて作成されますが、顧客の感情や思考回路に関しては作成担当者の私情が入ってしまう恐れが。また、時間がかかる分いったんやり終えると何年もバージョンアップされないケースもあるので、定期的に見直しを行うのが望ましいと言えるでしょう。
◎現状を正しく把握し、複数の手で実行するのがおすすめ!
カスタマージャーニーのポイントは、まず「現状を正しく把握する」こと。お客様の声やニーズ、課題などを徹底的に分析した上で、明確なゴールに向かってシンプルなマップを作成するのがコツです。
さらに、担当者が1人、もしくはひとつの部署に任せると視点や情報量も偏ってしまうため、できれば複数の部署や立場の人同士で行うのが良いと言われています。これまでにはなかった新たな気づきが生まれるよう、ペルソナのイメージも工夫してみてくださいね。