ECサイトを運営する上で押さえておきたい「KPI」。これは“主要業績評価指標”とも呼ばれ、売上の目標達成のために特に重要とされる指標のこと。
KPIは現状の課題や売上を把握できるだけでなく、目指すべき到達点に対して効果的な戦略を練るきっかけにも繋がります。しかし、その存在を活かすためには数値を確認するだけではなく、効果的な分析も行わねばなりません。
そこで今回は、代表的なKPIについて詳しく説明するとともに、成功のポイントもご紹介。類似のワードとして「KGI」に関しても学んでいきましょう。
KPIは「ゴールによって」重要度が変わる!KGIについても知っておこう
KPIは「Key performance indicators」を略した言葉で、日本語では主要業績評価指標と訳すことができます。簡単に言えば目標に対するパフォーマンスを測定するための「基準やデータ」を言い、ゴールに向かうプロセスを具現化したものです。
ここで注意したいのが「重要度の高いKPIは毎回同じとは限らない」というもの。設定したゴールごとに、どのKPIに重きを置くべきなのかは異なります。分析の際には、そういった点も押さえておきましょう。
◎KPIと似ている?「KGI」ってなに?
KPIとよく一緒に語られる言葉として「KGI」があります。これは「Key Goal Indicator」の略で、日本語では“重要目標達成指標”と訳されるものです。
KGIは簡潔に言えば「ゴールそのものを示す」指標。例えば今後の業績のため、以下のような到達目標を立てたとしましょう。
例)ECサイトの平均リピート率を50%にアップさせる
この場合、KGIとして注目されるのは「リピート率を50%にアップさせる」部分。対してKPIは「50%にアップさせるために必要なプロセス」と言えます。KPIが目標について細やかにチェックする指標とすれば、KGIは最終的な目標が達成できているかを後に評価する指標と表すこともできるでしょう。
ECサイトにおいてよく活用される、10項目のKPI
では、ECサイトにおけるKPIには一体どのようなものがあるのでしょうか?今回は、押さえておくべきとされる代表的な10項目のKPIを見ていきましょう。
その① 売上・利益
売上はECサイトにおいて自社の規模を表す最も明瞭な指標であり、1年から四半期、1か月、1週間、1日など幅広い単位でモニタリングを行うことができます。売上高は「セッション数×CVR×購入単価」という公式で割り出すことが可能。コスト面も含めてKPIを分析しましょう。
その② 訪問者数
訪問者数は「PV数」と表現することもでき、自社サイトに訪れてくれた人の数をさします。言い換えれば、自社のサービスを確認した人数とも言えるでしょう。この指標が伸びない場合は、SEO対策や広告の見直しなどを行う必要があります。
その③CPA(顧客獲得単価)
CPAは一見あたりのコンバージョン(問い合わせや購入など、顧客にとってこちらが望むアクション)にかかった費用をさし「広告費用÷CV件数」で求められます。広告費が高すぎると利益率が下がってしまうので、こちらも重要な指標です。
その④ CVR(コンバージョン率)
訪問者数のうち、商品を実際に購入してくれるなどこちらが期待するアクションを起こしてくれた人の割合をCVRと言います。これは「購入者数÷来訪者数」によって求められ、この数値が低い場合はよりサイトの内容や広告の分かりやすさなどを見直さなければなりません。
その⑤ LTV(ライフタイムバリュー)
LTVは「顧客が自社の商品を生涯で購入した総額」のこと。1人あたりの単価やリピート率が高いと、それだけ顧客にとって愛着を持ちやすい会社であることが分かります。このLTVをアップさせることは、多くのECサイト経営者にとって長期的なテーマであると言えるでしょう。
その⑥ AOV(平均注文額)
1人が1回あたりに購入した金額の平均をAOVと呼びます。これは「総収入÷オーダー総数」で求められ、ECサイトの収益力をはかるのに適した数値です。これが下がってしまっている場合は、訪問者を傾向によって分類し、よりAOVが高いグループの特徴を確認することで今後の戦略を立てます。
その⑦ リピート率
ECサイト、特にジャンルを絞って販売される単品リピート通販においては最も重要とされる「リピート率」。これは2回以上商品を購入した人の割合をさし、「リピート顧客数÷累計のユニーク顧客数」で求められます。本購入数に比べてこの値が低い場合は、よりブランド力や顧客にとっての価値を高めるための施策が必要となるでしょう。
その⑧ 引き上げ率
問い合わせや資料請求を行ったいわゆる「見込み客」から、本購入に至った顧客を表す引き上げ率。「見込み客の人数÷新規顧客の人数」で求めることができ、この数値が低い場合はメールやDM、オトクなキャンペーンなどで購買意欲を高める努力が必要です。
その⑨ ROAS
ROASは「広告費に対してどれだけの売上を達成できたのか」という指標。求める公式は「売上÷広告費×100(%)」となり、打ち出した広告がどの程度機能しているかをシンプルに確認できます。
その⑩ ROI
ROASに対し、ROIは広告費の「利益効果」をはかる指標です。「利益÷投資金額×100(%)」で求められ、広告効果や採算性などについて利益をベースとして割り出せるので、業績を判断するのに役立ちます。
また、ECサイトにおいては「離脱率」も無視できない指標です。これはどのページを確認した後にユーザーがサイトから離れてしまったか、という目安であり、離脱率が高いページと低いページを照らし合わせれば、CV率の差異から顧客の細かいニーズや自社サイトの課題を見つけることができます。
KPIを活用するポイントは「ツリー」を作成すること
このように、KPIには目ぼしいものを挙げただけでも様々な要素が存在します。では、こういった数値をどのように活用すべきか?というと、ポイントとしては「KPIツリーを作成する」ことです。
KPIツリーはその名の通り木をイメージした図として描かれ、KGI(遅行指標)を軸に、枝が連なるような形で「特に関連しそうなKPI(先行指標)」を繋げていきます。つまり、最も上部にあるKGIを向上させるにあたって、どのような数値を増やせば良いのかのロジックを分かりやすくしたものです。
ポイント① ゴール期限を設定し、季節の変動を加味した内容にする
せっかくKPIツリーを作成しても、戦略があまりに長期的すぎると意味がありません。分析した情報は時間とともに古くなりますし、それと共に効果も薄れてしまいます。検証する時期をしっかりと設定し、具体的な方針を検討するようにしましょう。また、季節によってデータは変わることもあるため、分析材料は前年の同じ時期のものにするといった工夫も必要です。
ポイント② SMARTの法則に倣い、必ず定量化できる指標にする
どのKPIをツリーの材料として選ぶかは、以下の「SMARTの法則」と呼ばれる基準に倣うとより効果のあるものを設定しやすいと言われています。
◎SMARTの法則
Specific(具体的である) Measurable(計測可能である) Achievable(達成可能である) Relevant(関連性がある) Time-bound(期限を決められる)
KPIは、基本的に「必ず数値として定量化できるもの」を選ばなければなりません。そのため、例えば営業活動を積極的に行っているか、顧客ニーズに寄り添った運営を心がけているかなど、漠然とした指標は不向きと言えるでしょう。前述した代表例を参考に、結果が数字で分かりやすいものを設定しましょう。
ポイント③ 諸経費を忘れず入れる
特にECサイトにおけるKPIツリーは、商品の単価や売れた数に注目してしまいがち。しかし、現実的には人件費やサイトの運営費、広告宣伝費、送料などの経費を差し引いた「利益率」から課題や目標を考えることが大切です。諸経費の存在を忘れず、企業の存続について慎重に分析しましょう。
◎外部ツールも利用しながら、適切なKPI分析を行おう
ECサイトでKPIを活用するためには「アクセス解析ツール」や「顧客情報管理(CRM)ツール」などのサービスを導入するのも有効な方法です。特にCRMツールは顧客傾向の分析や管理だけでなく、メール配信、営業推進機能なども搭載されているため、非常に心強いサポーターとなってくれるでしょう。
近年ではコンビニエンスストアチェーンとしてお馴染みの「セブンイレブン」も、SMARTの法則を意識したKPIによる顧客分析の仕組みを打ち出し、目標達成に繋げています。自社にとって今何が課題で、どう改善すべきなのか。KPIを慎重に分析し、より良いECサイトを作成したいですね。