1つのジャンルや商品に絞ってビジネスを行う単品リピート通販の中で、適した商材の代表例として挙げられやすい化粧品。通販新聞社が毎年発表している「通販・通教売上高ランキング」の2019年度の結果を見ても、単品リピート通販においては上位層のほとんどを基礎化粧品の会社が占めています。
▼参考:通販新聞社
https://www.tsuhanshimbun.com/products/article_detail.php?product_id=5528
また、「ドモホルンリンクル」でお馴染み、化粧品の単品リピート通販を行う企業である「再春館製薬所」は通販事業の先駆けとしても知られており、1980年代に電話での通販から顧客を拡大。その後1990年代以降は単品リピート通販業界も更に勢いを増し、ドクターシーラボや新日本製薬など、現在でも知名度の高い化粧品会社が次々登場しました。単品リピート通販の歴史的な観点からも、化粧品は興味深い題材であると言えるでしょう。
しかし、一体なぜ化粧品は単品リピート通販の商材として適しているのでしょうか?今回は化粧品の単品リピート通販についてのポイントや今後の課題なども含め、詳しく見ていきましょう。
そもそも単品リピート通販に向いている商材って?
単品リピート通販はジャンルが限られる分ビジネスモデル自体は分かりやすいように思えますが、安定した売上のためには「何を売るか」が非常に重要です。では、単品リピート通販に向いている商材とは何か?というと、一般的には以下のような条件を満たしたものが適していると言われています。
他では買えない、自社オリジナル商品
まず、最も大切なのが「オリジナリティ」。自社で開発・製作した商品や、そこでしか購入できない特別感のある商品を販売することが単品リピート通販を成功させる秘訣だと言われています。再春館製薬所をはじめ、代表的な成功企業たちもその多くは看板商品を作るところから始まりました。
リピート購入を狙い、買い替えが頻繁な「消耗品」であること
次に、単品リピート通販は商品を絞り込むからこそ、定期的な買い替えが必要なものでなければなりません。家具や家電など数年単位でしか購入しないものや、欲しい時にしか買わない書籍などではなく、生活用品や食品、スキンケア用品などの「消耗品」であることも、単品リピート通販の商材としてはポイントです。具体的には「年に4~5回程度購入しそうな商品」が目安と言われています。
単価が高すぎず、かつ低すぎないこと
また、少なくとも年に数回は購入して欲しいのであれば、例えば1回あたり毎回数万円かかるような商品だとなかなか手が伸びませんよね。かといって安くしすぎると客単価が伸び悩んでしまうので、1人あたり月々5,000円前後を目安として価格設定を行える商品が望ましいとされています。
こういったポイントを抑えた商材としてよく挙げられるのが、化粧品はもちろん健康食品やコーヒー、お茶などの食品、ボディソープや洗剤といった日用品など。基本的には「気に入ったら繰り返し同じものを使いやすい」商品が向いています。
◎特に基礎化粧品は「ライン」で売りやすい
化粧品の中でも、特に単品リピート通販に用いられるのが「基礎化粧品」。なぜかといえば、スキンケアにこだわる方は化粧水から乳液、美容液、クリームなどを同じブランドで揃え、ワンセットで「ライン使い」する人が多いからです。そのため基礎化粧品はシリーズ化しやすく、セット購入による高単価も期待できると言えるでしょう。
しかし、化粧品はEC業界では後れを取っている!?
このように、単品リピート通販において魅力的に見える商材、化粧品。しかし、中には「化粧品通販はEC化が思うように進んでいない」との説も。一体なぜそのようなことが言われているのでしょうか?
他商品に比べて、通販で購入する人の割合が少ない
化粧品は、直接肌につけるものだからこそ「初めてが通販」というのは不安…と考える人が多い、というのがひとつの理由。そのため、単品リピート通販においてはまずサンプル(試供品)を多くの人に手に取ってもらい、自分に合っているかどうかを確認してもらうことが大切です。
特に高級品の場合、店頭での接客を重視する人が多い
単品リピート通販における単価の目安は「月に5,000円前後」とお話しましたが、例えば単品で5,000円するものだとプチプラとは言いにくいですし、1万円を超えると一般的には高級品の部類に入るかと思います。
しかし、化粧品(コスメ)は高級なものであるほど店頭での接客を重視する人が多い、という傾向もあるようです。店頭だと実際に手に取って試せますし、専門のスタッフからアドバイスを受けることも可能なので、高いからこそ失敗したくない、という層には好まれるのですね。
競合多数で、差別化を図りにくい
基礎化粧品は、様々なメーカーやブランドから数多くの商品が販売されています。しかも国内の大手化粧品会社や外資系の化粧品会社、昔から通販事業に特化している化粧品会社など、異業種からの参入も含め資本力のある会社も目立つため、その中で新たな魅力をアピールするのは非常に難しいと言えるでしょう。
口コミやレビューの評価が基準になりやすい
通信販売事業において重要なのが「口コミ」。広告の印象だけで商品を購入することに抵抗がある人にとって、口コミは大切な指標です。特に化粧品は失敗すると肌状態に直結するため、信頼できる口コミを求める割合が大きいと言われています。
そこで、以前はアフィリエイターに依頼して作成した口コミサイトから、公式サイトに誘導する方法が一般的に用いられていた時代もありました。ですが、近年それが問題視され、Google検索のアルゴリズムもこの手法を有効としないよう改定されてしまったので、以前より口コミから売上を伸ばすことが難しくなったとされているのです。
ECサイトで重要な「広告費」!化粧品事業を成功させるポイント
では、化粧品の単品リピート通販の売上を出来るだけ効果的に伸ばすには、一体どのような戦略が必要なのでしょうか?一般的なビジネスモデルを見てみましょう。
店舗を持たないからこそ、広告費を先行投資
まず、初回購入者を増やすために重要なのは「広告」です。単品リピート通販において売上を伸ばすには、自社のECサイトという店舗へ人を呼び込まねばなりません。広告は顧客リストを得る上でも有効な手段なので、初期は売上より広告費が上回るのを前提として惜しまず投資されることが多いようです。
「リピート購入」を重視したマーケティング戦略
投資した広告費を回収するために重要なのは、徐々にでも「リピート購入」を増やすこと。
1回きりで買うのをやめるのではなく、気に入って再度(2回以上)買ってくれる顧客に繋げる必要があります。新規顧客からリピート購入、という安定した流れが生まれると、黒字に転換するだけでなくその後のマーケティング戦略を立てやすくなる面も。
リピート購入からの「定期購入」に繋げる
商品を繰り返し買ってくれる顧客が増えてくると、「毎回注文するのが面倒」「毎月必要なものだけど、これなら近くで買った方が早いかも」と不満も生まれてきます。これを解消するのに適した仕組みが「定期購入」です。企業にとっても将来的な売上予測を立てやすいため、定期購入システムを導入すると双方にとってメリットが大きいと言えるでしょう。
クロスセル/アップセルで、LTVの向上を図る
化粧品の場合、前述したとおりライン使いする人が多いため「クロスセル」や「アップセル」といったやり方で売上を伸ばしやすい側面もあります。
クロスセル…関連商品を勧める
例:美容液購入の際にクリームをおすすめ、オールインワン購入の際にクレンジングをおすすめなど
アップセル…よりハイグレードな商品を勧める
例:成分の配合ごとに複数の値段設定の美容液を用意し、より有効成分が豊富なものへのグレードアップをおすすめ
こういった提案を行うことにより、上手く興味を惹ければLTV(顧客1人あたりが生涯で自社に使った金額)アップも図れます。高品質な商品の提供はもちろん、どう関心を持たれるようにするかの工夫が、化粧品の単品リピート通販において重要なのですね。