ボディソープやハンドソープ、化粧品などの表示を確認していると、時々見られるのが「薬用」というワード。字面からすれば何となく普通の石けんや化粧品よりも身体にいいのかな?という気がしてしまいますが、これにはきちんとした意味が存在します。
そこで今回は「薬用」表記はどのような条件を満たせば可能なのか、をふまえ、医薬部外品や医薬品との違い、注意点(https://netshop.impress.co.jp/node/4404)などについて詳しく見ていきましょう。
薬用=医薬部外品!医薬品や化粧品との違いは?
ドラッグストアや通販サイトなどで商品を見ていると、特に石けんや歯磨き粉、化粧品などに多く表記されている「薬用」という言葉。もしかしたら、よく分からないけれど良さそう…と漠然とした気持ちから選んでしまっている方もいるかもしれません。
では、薬用とはどのような意味なのか?というと、一般的には「厚生労働省によって許可された効能・効果に有効とされる成分が含まれている製品」を指します。薬用製品と同じように、ドラッグストアや通販サイトなどで比較的気軽に購入できる「医薬部外品」と同様の意味をもつ、と考えて良いでしょう。
ただし、上記のような成分を配合しているからといって「医薬品」ではないため、注意が必要。成分的には「化粧品」より肌悩みの症状にアプローチしやすいものの、治療には使えない、ということは覚えておかなければなりません。それぞれの特徴については医薬品医療機器法(旧薬事法)により明確に定義されていますから、以下をご参考ください。
医薬品
特定の症状に対し、厚生労働省に認められた有効成分が配合されている製品で、主に「治療」を目的として提供されるもの。必ずしも医師の指導が求められるわけではなく、処方が必要な「医療用医薬品」、医療用医薬品から市販薬に転用されたばかりで、購入の際は薬剤師から対面で説明を受けなければならない「要指導医薬品」、ドラッグストアでも比較的簡単に購入できる「一般医薬品」と、3つの分類が存在します。
また、一般医薬品は成分に応じ、さらに細かく枝分かれしているのが特徴。例えばドラッグストアで風邪薬や特定の疾患に効果が期待できるとされる薬剤を買おうとしたのに、担当者不在により対応してもらえなかった、という経験をしたことはないでしょうか?これは一般医薬品に第1類~第3類といった種類が存在し、販売にあたっての規定が設けられているからなのです。
第1類:一般医薬品の中でも副作用等のリスクが大きく、薬剤師による販売が義務化されているもの 第2類:第1類医薬品に次いで副作用等のリスクが大きく、薬剤師や登録販売者による説明・販売を努力義務としているもの 第3類:第1類や第2類に含まれないもの
上記の通り、第1類~第3類の順に購入が難しい、とお考えください。第2類は薬剤師が在籍していないドラッグストアでも、登録販売者の資格を持つ人がいれば販売できるため、現在市販されている一般医薬品のうち大半がここに分類されるとも言われています。
薬用製品(医薬部外品)
薬用表記のある製品、あるいは医薬部外品は言わば「医薬品と化粧品の中間」に位置するもの。前述した通り厚生労働省が許可した効能・効果に有効とされる成分が一定の割合で含まれますが、医薬品に比べると身体への作用は緩やかです。
治療ではなく、あくまでも「症状の防止、衛生(清潔な状態にする)」を目的に作られている製品で、主に以下のような場合に使用するもの、と定義されています。(以下、引用)
イ 吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止 ロ あせも、ただれ等の防止 ハ 脱毛の防止、育毛又は除毛 ニ 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物(この使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの
引用元:東京都健康安全研究センター(http://www.tokyo-eiken.go.jp/k_yakuji/i-sinsa/bugaihin/bugaihin_kentou/)
化粧品
化粧品は、医薬部外品と比べてさらに身体への影響が緩やかな製品を指します。成分は具体的に決められていませんが、その分肌荒れやニキビの緩和、皮膚の殺菌などに対する効能や効果をラベルに表記することはできません。あくまでも肌を清潔にする、保湿するといった目的で使われるスキンケア製品ですね。
薬用(医薬部外品)表記をするには、厚生労働大臣の承認が必要!
このように、医薬品や医薬部外品はしっかりと分類や基準が定められています。では、自社の製品を医薬部外品(薬用)として売りたい場合、どういった手順を踏めば良いのか?というと、基本的には「品目ごとに厚生労働大臣の承認を受ける」必要があるようです。
ただし、次の品目に該当するケースでは、医薬部外品製造販売業許可を行う所在地の都道府県知事に承認権限が委任されています。(以下・引用)
・生理処理用品 ・染毛剤 ・パーマネント・ウェーブ用剤 ・薬用歯みがき類 ・健胃清涼剤 ・ビタミン剤 ・あせも・ただれ用剤 ・うおのめ・たこ用剤 ・かさつき・あれ用剤 ・カルシウム剤 ・喉清涼剤 ・ビタミン含有保健剤 ・ひび・あかぎれ用剤 ・浴用剤 ・清浄綿
引用元:独立行政法人医薬品医療機器総合機構(https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/about-reviews/q-drugs/0006.html)
また、申請の際には製造業としての許可を得る手数料として、3万円前後~4万円弱ほど(品目による)の費用がかかります。手続きの手間やコストがある程度かかることをふまえ、申請を検討しましょう。
商品説明や広告は「薬機法」を守って!薬用製品を販売する際の注意点
薬用製品(医薬部外品)は、化粧品とは違ってある程度の効能・効果が期待できることをパッケージやラベルに記載可能なのがメリット。ただし、一歩間違えれば「薬機法」に抵触してしまう恐れもあるため、特にECサイトの場合は宣伝や広告などのコピーに注意しなければなりません。
薬機法において気を付けるべきことはさまざま!
薬機法は、医薬品や医薬部外品、化粧品の安全性や品質、有効性を保証するために設けられている法律のこと。基本的には製造から販売、安全対策に至るまでの幅広い工程を含む法律ですが、ECサイトの広告において代表的な注意点としては「誇大広告」や「他社の誹謗広告」、「医薬関係者の推薦」などが挙げられるでしょう。
例)
このサプリで免疫力UP!コロナに感染しない身体を作る:誇大広告 ○○成分を配合した化粧品はもう時代おくれ!:他社の誹謗広告 ○○クリニックの○○先生からもお墨付き!:医薬関係者の推薦
また、例えば「口臭を防ぐ」「制汗成分配合」「わきがを予防」など、認められた範囲内でのコピーを使用することは許されますが、あたかも治療と同様の効果が期待できるかのような表現を記載すると薬機法に違反しかねませんから、広告は慎重に打ち出す必要があります。
とはいえ、薬機法を完璧に押さえた上で魅力的な広告を考えるのは難しい面もあるかもしれませんね。そこで、場合によっては薬事法管理者、およびコスメ薬事法管理者の資格をもつ人物や、薬事コンサルタント等の専門家に相談するのもおすすめです。
◎OEM企業の登場により、医薬部外品市場は拡大している
薬用製品(医薬部外品)は申請から広告表現に至るまで気を配らねばならない部分が多いので、中には躊躇してしまう経営者の方もいるかもしれません。しかし、いっぽうで近年、医薬部外品市場はより拡大しているとも言われています。
その背景には、化粧品のOEM企業が続々と医薬部外品対応を始めたから、という理由もあるようです。OEMは専門的なノウハウをもつ外部の企業に、製品開発・製造を委託する方法。これを利用すれば「アイデアはあっても、サプリメントや化粧品の製造には明るくないし…」と諦めかけている人でも、ECサイトの経営に乗り出しやすいのではないでしょうか。
「薬用」というキーワードが記載されていると、消費者もやはり安心感を覚えやすいもの。コンサルタントやOEM企業などの手を借りることも視野に入れつつ、ぜひ魅力的な商品や広告を考えたいですね。