ネットで品物を購入する通信販売とは違い、あらかじめ決められた金額を支払うことで一定のサービスを受けられる「定額制」ビジネス。昨今よく聞かれる言葉として「サブスクリプション」というものもありますが、実は定額制とサブスクリプションは厳密には別物です。
しかし、中には新たな定額制のモデルとしてサブスクリプションという単語を使う人もいます。では、一体双方はどういったところに違いがあるのでしょうか?今回は定額制、およびサブスクリプションのメリット&デメリットにも焦点を当て、ビジネスモデルのポイントを見ていきましょう。
サービスへの支払い方法は様々!定額制とサブスクリプションの違い
まず、定額制サービスとサブスクリプションの違いについてです。定額制、月額制にはいくつかの種類があるので、それに関してもご説明します。
定額制の中でも色々!様々なサービス方法
定額制といえば、一般的には希望のサービスを受けるために毎月同じ額支払うもの、という気がしますよね。しかし、実は様々なサービス形態が存在するため、内容をしっかり確認することが大切です。
・定額制(固定制):利用量・利用時間を問わず一定金額でサービスが使い放題になる ・従量制:基本的には月額制で、サービスの利用料に応じて金額が変動 ・定額従量制:決められたライン(量・時間)までは定額で、それ以上になると別途料金が発生 ・段階定額制:決められたラインまでは定額制で、それ以上になると従量制に切り替え(上限に達すると再び定額に切り替わる) ・段階変動従量制:決められたラインまでは従量制で、そこを超えると異なる単位での別途料金が課される ・階段従量制:プランが複数用意されており、利用量によって該当する段階へ自動で切り替わる
通常定額制、と言われているのは「固定制」ですが、月額料金の設定方法は上記の通り色々なものがあります。また、定額制とは異なり、初期費用や事務手数料など1度の課金で済むサービスに関しては「一時課金制」と呼ばれます。
「サブスクリプション」は厳密には定額制ではない
近年注目されている定額制サービスとして「サブスクリプション」を思い浮かべる人も多いでしょう。サブスクリプションは元々「定期購読」を指す言葉で、毎月一定額を支払えばそれに見合う商品やサービスを継続的に受容できる、というものですね。
しかし、サブスクリプションは定額制のビジネスモデルとは異なる、との声もあります。双方の違いは何か?といえば、最も分かりやすいのは「製品よりも顧客に寄り添ったビジネスモデルである」という点です。
従来の定額制は同一の商品やサービスを毎月提供し続けるのが基本で、定期購入をしてもらえるのがひとつの到達点でした。ですが、サブスクリプションの場合はデータを最大限に有効活用し「どのような顧客が何を求めているか?」をテーマとしているため、情報を基に常にサービス内容がアップデートされます。
また、製品を定期的に「売る」のではなく「利用してもらう」のが中心になっているのも特徴。映画やドラマのDVDを買わなくても、提供されている動画として鑑賞できるサービス(NetflixやHuluなど)や、車を買わなくてもその時乗りたい車を一定期間契約でき、乗り換えも可能なサービス(トヨタKINTOが代表的)など、置き場所やツールの手間なく気分によって利用を決められるのが魅力です。
これからは「サブスクリプション」が主流に?普及の理由やメリットとは
ある意味で定額制の進化版とも言えるサブスクリプション。近年急速に普及している理由としては、スマートフォンをはじめとする汎用型デバイスが広く流通したことや、ユーザーの興味が「モノ」から「コト(経験)」へ移っていること、メーカーの戦略が安定志向へと変化しつつあることなどが考えられます。
なぜメーカーが戦略を安定志向に切り替えたのかというと、ユーザーの思考の移り変わり(不況や趣味の多様化による意識の変化など)と密接に絡み合っているから。物を購入する行為は財産を得られるという安心にも繋がりますが、逆に劣化や維持費などのリスクを伴う恐れもあります。昨今ではそういったマイナス要素を避け、その時必要なサービスを受けたいと思う人が増えたため、メーカー側もそれに対応する必要が出てきたのですね。
では、サブスクリプションの具体的なメリットについて、主に企業側の視点から見てみましょう。
メリット① 新規ユーザーを獲得しやすい
サブスクリプションは、ユーザーから見ると「安い初期費用で豊富なサービスを受けられる」ビジネスです。そのため、商品の定期購入に比べると取っつきやすく、新規ユーザーの獲得が比較的容易だと言われています。
メリット② ユーザー数を把握しやすく、在庫管理やアップセルの戦略を立てやすい
サブスクリプションの多くはいくつかのプランに分けてサービスが提供されるため、どのプランをどれだけのユーザーが利用しているかを把握しやすく、通常の商品販売に比べると仕入れ・在庫の管理が簡単なのも魅力。しだいにユーザーごとの傾向が分かれば、上位プランへのアップセル(よりハイグレードな商品を勧めるマーケティング法)も行いやすいと言えます。
メリット③ 上手くいけば継続的・かつ安定した収益が見込める
定額制とまったく同じではないものの、サブスクリプションも毎月一定額を支払うシステムなので、ユーザーが増えればそれだけ定期的、かつ安定した収入が見込めます。解約さえされなければ来月、再来月…と同程度以上の収益が継続していくため、年間計画も立てやすいでしょう。
メリット④ デジタル・アナログを問わず導入できる
サブスクリプションと言っても、オンライン上のサービス(月額制の動画サービスやオンライン英会話、オンラインジムなど)だけでなく、実際に毎月決まったジャンルの商品を送る方法もあります。
例えばその人の好みを人工知能によって分類し、興味がありそうなお菓子を詰め合わせて送る、好みに合った香りを診断し、毎月小瓶に入った異なる香水を提供するなどですね。こういった例も含めるとアナログ、デジタルを問わず様々な業界で導入が可能なため、企業側にとっても検討しやすいビジネスモデルと言えるでしょう。
メリット⑤ ユーザーと直接的なつながりを持てるため、改善もしやすい
サブスクリプションはユーザーの解約が何よりの痛手となるので、常にサービス向上に努めなければなりません。しかし、数多くのユーザーと直接的なつながりを持ち、かつそれに合わせたデータを得ることが可能なビジネスモデルですから、顧客ごとに求めるものも分かりやすく、サービスの改善やアップデートも比較的簡単です。
◎サブスクリプションにもデメリットはある!
サブスクリプションは企業側、ユーザー側それぞれにメリットが豊富なビジネスモデルですが、逆に以下のようなデメリットも存在します。
・初期ユーザー獲得から売上に繋がるまで期間が空く
・先行投資→利益回収型のビジネスモデルなので、慎重かつ現実的な戦略が必須
・継続契約を途切れさせないため、常にサービスの維持向上が求められる
・変動するニーズに合わせ、新規コンテンツ開発のコストがかかる
総合すると「初期投資を回収し、かつ継続して利益を得続けるためにトレンドやユーザーのニーズを敏感に察知し、改善や新規コンテンツ提供に努める必要がある」と言えます。サブスクリプションは最初で興味を惹かれても、続けていくうちにもう大体目的は果たしたかな…と飽きられやすい側面もありますから、注意が必要です。
定額制サービスのポイントは「信頼関係」を構築すること
今後どんどん広まってゆくであろう定額制の形、サブスクリプション。導入の際はメリットだけでなくデメリットも踏まえ、ユーザーに支持されるサービスになるよう努力する必要があります。
最も重要なのは、顧客にとってそのサブスクリプションが「他とは違う」魅力を持っているかどうか。それぞれにとって自分好み、かつ継続しやすい定額制サービスとなるために、ユーザーの多様性を理解して特別な経験や商品を提供する、というのが理想なのではないでしょうか。