次世代の定額制サービスの形として、昨今注目されている「サブスクリプション」。従来の定額制サービスは基本的に物を売り、毎月同じクオリティのものを提供して継続購入を狙うというのが一般的でしたが、サブスクリプションモデルには以下のような特徴があります。
・「モノ」より「コト(経験)」を重視し、顧客のニーズに寄り添う ・顧客データを基に、コンテンツが常にアップデートされる ・デジタル・アナログを問わず数多くのサービス形態が存在する
サブスクリプションは大まかにいくつかのタイプに分けられますが、販売だけでなく「レンタル」や「体験してもらう」サービス形態なども存在するため、ネット媒体のみならずアナログ路線でも導入が可能。大手企業をはじめ、幅広い業界で普及し始めているシステムです。
しかし、具体的にはどのようなサービスが行われているのでしょうか?今回はサブスクリプションモデルの成功事例を中心に、失敗しないポイントについても見ていきましょう。
様々なサービス内容が存在!サブスクリプションモデルの成功事例
サブスクリプションには、大まかにBtoB(企業が企業に対してサービスを行う)とBtoC(企業が消費者に対してサービスを行う)、2つのタイプがあります。その他にもサービス内容ごとに以下のように分類されますから、念のため押さえておきましょう。
サブスクリプションモデルの大まかな分類
⒈定期便タイプ:好みに合わせたお菓子やお酒、コスメなどが毎月送られるサービス ⒉レンタルタイプ:ブランド物や洋服、靴などを貸し出すサービス ⒊利用の権利を与えるタイプ:決まった作品から動画や映画、音楽などを視聴できるサービス ⒋体験を提供するタイプ:特別なイベントやトレーニング、レッスンなどを定額で受けられるサービス
定期便の場合は基本的に「商品はお任せ」というタイプが多く、ユーザーが答えたアンケートや診断などによってデータ化された好みに合わせてチョイスされたり、万人が喜びそうなものがバランス良く入れてあったりします。では、具体的にどういったサービスで成功を収めているのか、身近な企業を中心にご覧ください。
音楽業界の例【Apple Music(アップルミュージック)】
URL:https://www.apple.com/jp/apple-music/
最初にご紹介するのは、月額980円で5,000万曲以上から好きな作品を聴くことができる音楽のサブスクリプションモデル。アメリカの企業Appleが運営している関係からか、開始当初は邦楽のラインナップが乏しいとの声もあったようですが、最近では改善されています。世界トップクラスのシェアを誇るサービスなので、スマートフォンにアプリを入れている、という方も多いのではないでしょうか?
飲食業界の例【coffee mafia(コーヒーマフィア)】
飲食業界の成功事例としてよく取り上げられるのは、西新宿に店舗を構える「coffee mafia(コーヒーマフィア)」。ラージサイズのコーヒーが何度でも無料で飲めるライトコース(3,000円)から、カフェラテMも無料になるスタンダードコース(4,800円)、すべてのドリンクが無料になるプレミアムコース(6,500円)まで用意されており、夜のバル開店時でも使える割引サービスもついています。
店主の高梨氏の話では、利用者の来店回数が思った以上に多く、コーヒーだけなら赤字という話もありましたが(参考:https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00010/00004/)それをきっかけに店舗としては黒字化できており、ノウハウを活かしてフランチャイズ化も考えているとのこと。サブスクリプションでの利益のみを考えず、他のビジネスに繋げるという方法もあるのですね。
食材販売業界の例【Oisix(オイシックス)】
URL:https://www.oisixradaichi.co.jp/
オイシックス・ラ・大地株式会社が提供する食材の定期宅配サイト「Oisix(オイシックス)」もサブスクリプションの代表例。質の高い有機野菜は生産者にとってもコスト面でリスクがありますが、こちらのサービスを設けることで作ったのに売れない、というリスクも軽減され、安心して生産が可能となりました。
売上は2017年3月期の230.1億円から、2020年3月期には710.4億円までアップ。実に3倍程度まで伸びています。
アパレル業界の例【airCloset(エアークローゼット)】
URL:https://www.air-closet.com/
アパレル系のサブスクリプションモデルとして代表的なのは、月々3,960円からプロのスタイリストが厳選したファッションをレンタルできる「airCloset(エアークローゼット)」。毎日出勤、通学に着る服を買うのは大変ですし、たくさんあっても置き場所に困ってしまうという人は多いですから、非常に助かりますね。
売上的にも2020年6月期には40%増を記録しており(参考:https://news.mynavi.jp/article/20210307-1783918/)急成長中の企業であることが分かります。
BtoBの例【Microsoft(マイクロソフト)】
URL:https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/buy/microsoft-365-family
BtoBのサブスクリプション例として分かりやすい成功事例は、Microsoftの「office365」が挙げられます。従来のofficeソフトウェアは買い切り型(購入したパソコンに搭載されているバージョンのまま)が主流でしたが、サブスクリプションを導入したことで月額費用を払えば常にアップデートした最新バージョンを使用可能となりました。
もちろんBtoCでも活用できるものの、どちらかといえば企業からの注目度の方が高いよう。パソコンを一度に買い替えたりofficeを入れ直したりする必要性を考えると、確かに大幅にコスト削減できそうです。
サブスクリプションを成功へ導くポイントは?
成功事例を見て、どこかで見た、あるいは自分も気になっていたサービスがたくさんある、と思った方も多いのではないでしょうか。サブスクリプションは、このように成功すれば大きな利益を得ることも可能です。
しかし、当然ながら失敗してしまう例も。サブスクリプションは最初に広告費や初期費用を投入し、後から収益を回収するというシステムなので、最初は順調でも徐々に解約が増えるとマイナスになってしまう場合も少なくありません。
◎よくある失敗例
・元々ニッチな業界なのに、初期投資に気合いを入れすぎて利用者数に見合わなくなった
・定期便の内容がかわり映えせず、消費者に飽きられてしまった
では、こういったリスクを避けるためのポイントとしてはどのようなものがあるのでしょうか?
ポイント① 段階別の定額プランを設ける
まず、サブスクリプションは基本的には毎月同じ金額を支払うシステムですが、顧客の予算やニーズに合わせて複数のプランを用意すると手が届きやすいと言えます。また、ベーシックプランより安めのお試しプランだけでなく、それよりハイクオリティなプレミアムプランも選択肢に加わると、サービスに魅力を感じた時よりランクアップしたプランに移行してもらえる可能性もあるでしょう。
ポイント② 双方向のコミュニケーションを大事にする
サブスクリプションビジネスにおいて、顧客との信頼関係を構築することは非常に重要。細やかなデータ整理でユーザーごとの動向や好みを把握し、それに寄り添ったサービスを提供できるよう努力しましょう。ユーザーからの問い合わせやアクションにも敏感に反応することで信頼度をアップさせ、双方向のコミュニケーションを生むことが大切です。
ポイント③ キャンセルや解約などは自由(制約なし)にする
解約が最もマイナスになるからと、中にはサービスの解約に必要以上の手順を踏まなければならないようにする会社もあります。
ですが、これは逆効果。入会や解約にかなりの手間がかかるとなると、もし再開したくなった時にもまた辞めたくなったらどうしよう…と抵抗が大きくなりますよね。いつでも自由に、かつ手軽にできるようにした方がユーザーからの好感度が上がり、再び契約してもらえるチャンスも増えるでしょう。
サブスクリプションは成功すれば、安定、かつ継続した収益を出せるビジネスモデルです。どうすれば顧客に興味を持ってもらえるか?どう働きかければその後もサービスに魅力を感じ続けてくれるか?を焦点に、常に状況を見て改善や向上に努めなければならないのですね。