経営者は人材確保や資金面などの難題を常に考えながら、企業を発展させるべく日々奮闘しています。しかし企業内ではトップの立場から、相談相手がおらず孤独な戦いをしています。
考えなければならないことが沢山ありすぎて、経営が上手くいかなくなったり、ストレスで体調を崩す経営者も少なくありません。そんな時周りに助けを求められたら…と考えたことはありませんか?
経営について理解して相談に乗ってくれる相手がいない場合、どうすれば良いのでしょうか。
本記事では、経営者が安心して相談できる相手の探し方や、候補者の選ぶポイントを分かりやすく解説していきます。
経営者に相談相手が必要な理由
特に中小企業の経営者には、相談相手がいないといわれていますが、それは何故なのでしょう。多くの経営者は自分自身も現場での業務に携わっており、日々の業務をこなしながら相談相手を探すことはできません。
特に企業を立ち上げたばかりだと人脈もなく、企業を理解して相談に乗ってくれる相手はほぼいないでしょう。そのため社員と同じように働きながら、経営者としての企業運営もひとりで問題を抱えなければならない状態になります。
そのような状態で重要な判断を求められる場面や心理的な負担を考えると、一人で抱えるには限界があります。その結果問題点を客観的に見つめることができず、状況の悪化にも繋がりかねません。
相談相手がいれば、意見を出し合ったり、新しい視点やアイデアも出てくる可能性があります。
引用元:株式会社野村総合研究所「中小企業・小規模事業者における経営課題への取組」
実際に経営者に相談相手がいる場合、経営が向上するという調査結果も報告されています。
経営者にとって相談相手を持つことは、企業のためであり経営者自身の負担軽減にもなります。
経営者の相談相手の候補
経営についての悩みを解決するためには、信頼できる相談相手がいるかどうかが大切です。相談すると言っても、誰でも良いわけではありません。相談相手の候補者の属性によって、相談する内容や専門性も変わってきます。
では、相談相手はどのような人物が良いのでしょうか。経営陣・従業員から税理士、経営者仲間、金融機関、士業やコンサルタント、公的支援機関まで、それぞれの特徴を確認していきましょう。
経営陣・従業員
経営において、信頼できる経営陣や従業員に相談できるということはとてもよい環境です。自社の実情をよく理解していて、人材不足や問題点を現場で働く立場から意見を出すことができます。
また、外部機関ではないため情報漏洩のリスクは低くなります。経営者と悩みを共有できることで従業員との信頼関係も深まることにも繋がります。
しかし、立場の違いから本音を言いづらかったり、意見を求められなかった従業員が不満に感じるなど従業員同士の関係性にも細心の注意を払うようにしましょう。
社内で相談相手を見つけるためには、日頃からオープンなコミュニケーションを心がけることが重要です。定期的な面談や意見交換の場を設けることで、互いの信頼関係を築いていけます。
税理士・公認会計士
経営者の悩みとして一番に挙がるのは、資金問題です。企業を経営するためには必ず資金が必要でそれをもとに運営していかなければなりません。資金面での困りごとでは、税理士や公認会計士などのお金の専門家に相談することをお勧めします。
多くの中小企業は税金の申告業務だけでなく、顧問契約を結んで資金繰りや経費関係、設備投資についての財務相談などにも対応してもらっています。
ただし対応してもらえる範囲はそれぞれ違うこともあり、経営面への対応に難色を示す専門家もいるため契約前に確認しておきましょう。もし現在の顧問が相談に応じてくれない場合は、企業の今後のためにも経営面での相談に乗ってもらえる専門家に変更することも考えましょう。
税理士や公認会計士は数字に基づいた客観的なアドバイスができるため、感情的にならずに冷静な判断を下すことができます。
経営者仲間
経営についての悩みは同じ立場を経験した経営者に相談することで、さらに的確なアドバイスが得られる可能性が高くなります。多くの経営者は同業種、異業種関係なく経営者同士で交流して互いの悩み相談やアドバイスを求めるなど「経営者同士ならではの悩み、責任の重み、孤独感」などを共有し合っています。
相談することによって新しいアイデアが浮かんだり、モチベーションが高まることもあるため経営仲間との交流には意義があります。
注意点としては、相手は社外の人間であるため、情報漏洩などには細心の注意を払いましょう。
経営者仲間との関係は、お互いに学び合える貴重な機会でもあります。成功事例や失敗談を共有することで、同じ失敗を避けたり、新たなビジネスチャンスを発見したりすることも可能です。信頼関係を築けば、長期的なパートナーシップにも発展する可能性があります。
金融機関
取引先の金融機関の担当者とは、経営について相談できる信頼関係を早めに築いておくとよいでしょう。日頃から経営上での課題や実情を共有しておくことで、必要なときに資金調達をスムーズに進めることができます。
また、金融機関によっては、税理士や社会保険労務士などの困りごとに対応できる専門家を紹介してくれることもあり、課題解決の一歩となることがあります。
セミナーや相談サービス、経営コンサルティングなども行っている金融機関もあり、ニーズに合った付加価値の高い助言をしてもらえる可能性が高まります。
金融機関との良好な関係は、単なる融資だけでなく、経営に関する幅広い情報提供や人脈紹介にもつながります。定期的な業績報告や相談を通じて、企業の成長を支援してもらえる心強いパートナーとなることでしょう。
士業やコンサルタント
経営についての悩みによっては、弁護士や社会保険労務士、司法書士、中小企業診断士など士業の専門家やコンサルタントに相談することも良いでしょう。
相談相手が士業の専門家やコンサルタントとなると、より専門的で豊富なアドバイスを受けられるというメリットがあります。
士業の専門家の中にも、経営コンサルタントの役割も担う専門家もいるため、いろんな立場から問題点を考えることもできます。
特に法的な問題や労務管理、事業承継などの複雑な課題については、専門知識を持った士業の力を借りることが不可欠です。また、経営コンサルタントは業界の動向や最新のビジネス手法に精通しているため、競争力強化のための具体的な戦略を提案してもらえます。
費用はかかりますが、専門性の高いアドバイスを受けることで、長期的には大きなメリットを得られる可能性があります。
公的支援機関
弁護士や公認会計士、コンサルタントなど、費用面でも気になる場合は、まずは公的支援機関を探してみましょう。
商工会や商工会議所、中小企業支援センター、よろず支援拠点などの公的支援機関は、経営に関する相談先として有効活用すると良いでしょう。
公的支援機関は、中立の立場から細かなアドバイスもでき、多くは無料で利用できることがメリットです。
商工会議所は地域の様々な事業主が集まる場所で、その会員になると経営支援サービスも受けることができます。
都道府県が設置している中小企業支援センターでは、経営についてや資金調達専門家の派遣、セミナーの開催など幅広い支援を行っています。公的支援機関は、地域によって名称が違うため、利用する際はホームページで確認しておきましょう。
経営者の相談相手の探し方を解説
相談相手の属性が分かったところで、待っていても前には進みません。自ら積極的に行動に移さなければ、いつまで経っても一人で抱えることになります。
ではどのように第一歩を踏み出せばよいのでしょうか。社内コミュニケーションの強化から、商工会への登録、プロとの契約、セミナー参加、異業種交流会、マッチングサービスの利用まで、経営者が孤独にならないための具体的な方法を解説していきます。
社内の人間とのコミュニケーションを図る
社内の人間とよりよい関係を築くことは、企業の未来を考えるととても大切になってきます。経営者自身が、現場の人間と積極的に関わり意見や要望を受け止めることで従業員の意欲や結束力も強くなり、業績の向上にも繋がります。
社内で信頼できる相談相手を作るためには、日頃からコミュニケーションを取っておく必要があります。
従業員が、経営者から突然意見を求められても、本音で的確に意見を言えることはほとんどないのではないかと思います。
ただし交流の方法はその時代によってNGとなる場合があるため、従業員との関係性に溝ができないように注意が必要です。例えば飲みに誘う場合は、相手の立場や、考えを考慮して無理強いしないように気を付けましょう。
地域の商工会に登録する
経営者が集う、地域の商工会に登録してみましょう。
商工会では経営の悩みについての無料相談を受け付けており、また商工会の会員同士で意見交換ができ、経営者の繋がりが出来上がることもあります。
会費は地域によって違いますが、無料~月額2,000円程度のところが多いので、とりあえず気軽に登録しておいても良いでしょう。
流れは以下の通りです。
- 地域の商工会に問い合わせ
- 申込書の記入をして、提出する
- 入会の審査を待ち承認を受ける
- 入会手続きが完了
- 会員のサービスを利用する
プロと契約を結ぶ
財務や集客などの専門的な問題には、実績のある経営コンサルタントに相談すると安心です。費用はかかりますが、問題に的確なアドバイスをもらえる可能性が高いです。
しかし専門家によって実力に差があるため、事前に口コミや実績を調べておく必要があります。相談したところでかみ合わないようなら、早めに別の担当者に変更しましょう。
多くの経営コンサルタントはそれぞれ得意分野を持っており、初回相談無料など気軽に相談できるようなサービスを行うところもあります。
資金繰りや事業の立て直しなどの重大な問題には専門知識のあるコンサルタントに相談することが、最短の解決法となることもあります。
経営者が集まるセミナーに参加する
経営者同士がつながりを持つためには、コミュニティやセミナーに参加すると良いでしょう。特に経営者同士の交流を目的として開かれた会では、セミナー後に飲み会などが開かれる場合も多く、フランクな会話の中から思いがけないヒントが得られる可能性もあります。
規模によっては100人以上が集まる会もあり、人脈や経営者仲間と出会いやビジネスチャンスを得られるかもしれません。
「女性経営者」「若手」「ベンチャー向け」などの対象を絞った会もあり、自分の求めるべき経営仲間が集う場を選んで参加すればより良いつながりを作ることができます。
異業種交流会に参加する
異業種交流会は、普段会うことのない業界の経営者とつながることができる場です。業種が違うからこそ異なる視点や悩みに触れることで、全く別の新たな発想が出てくる可能性もあります。
営業目的で参加する経営者が多い会では、結果として何の成果もないこともあるため、よく見極める必要があります。目安としては会費が1万円以上で「経営者限定」という会や経営者が多く参加する会を選ぶと良いでしょう。
異業種交流は視野を広げるだけでなく、思わぬ形でコラボや事業のチャンスになることもあるためアンテナを張り巡らせるようにしておくことが大切です。
参加する前に、「どんな情報が欲しいか」「どんな相談相手を探しているか」など具体的な目的を確認しておくことで、効率よく関係を築くことができます。
マッチングサービスを利用する
経営者が抱える問題は、ほかの経営者も同じようなことで悩んだ経験がある場合も多くあります。同じ立場を経験した経営者同士で相談した方が、早く解決に向かう可能性もあります。
経営仲間と出会う場としては、上記の異業種交流会や経営者コミュニティ、マッチングサービスなどがあります。中でもおすすめなのはマッチングサービスです。経営者同士で悩みを相談しながら商談も両立できるため、問題解決と新たな戦略に結び付きやすくなります。
マッチングサービスを利用する時は、必ず実績や登録者数、満足度などを調べて慎重に選んで決めましょう。無料期間を設けているところもあるので、その期間に機能や操作を試してみることをお勧めします。
有料サービスだからといって、良い相談相手と巡り合える確率が上がるとは限らないため、費用の面でもしっかり考えておきましょう。中には、営業目的だけで登録する人もいるため、何を目的に利用するのかはっきりとした意思を持っておきましょう。
経営者のマッチングサービスを利用する時は、まず他の登録者の属性や業種が求めている相談相手と合っているのか確認しておくことが大切です。
上場企業の経営者や中小企業の経営者、ベンチャー企業の代表、専門的な知識や経験値のあるフリーランスなどそれぞれ対象が違うため、目的に合ったマッチングサービスを選択できます。
経営者の相談相手を選ぶ際の4つのポイント
経営者の悩みを相談できる相手は、いろんな分野にいることが分かりましたね。弁護士や税理士などのお金のプロ、金融機関、経営コンサルタント、公的支援機関などどこでも親身になって相談を受けてくれることでしょう。
それぞれのメリットや特色を挙げられても、何を基準に選んでよいのか悩みます。ここでは相談相手を選ぶ際の4つのポイントを見ていきましょう。数ある相談相手の候補から、決めるべきポイントを見ていくと、誰がよいのか選ぶ道筋が見えてきます。
①サポート内容の範囲はどこまでか
経営に関する相談をする際に、事前に確認しておきたいのがサポート内容がどのようなものまで対応できるかという詳細です。「この内容はここまでサポートできる」など相談先によって違うことも多いです。
経営相談は一回で完結することはなく、長期的に考えなければなりません。経営での問題は単純ではなく、複雑な問題が入り組んでいる場合があり解決策を見つけるまでに時間と段階を踏んだ対応が必要となります。
相談相手から助言を受けた後で実際に行動に移し、その後の結果や新たな課題などを共有して次の段階へ対応を変えていかなければなりません。対応策を試して、試行錯誤を繰り返すことで、最適な結果が見えてくると言えます。
②料金は自身の経済状況に合っているか
相談先によって相談料が無料や有料など違いがあります。月額〇〇円、1時間〇〇円などシステムもそれぞれ設定しているためよく確認しておきましょう。
相談のための費用は、どれだけ掛けられるかその企業によっても異なります。一度の利用だけでなくしばらく継続する可能性が高いため、経済状況をよく考えて相談先を決めてください。
公的支援機関の多くは無料で利用できますが、専門性の高いコンサルタントや士業の専門家は費用が発生します。しかし、適切な投資として考えれば、経営改善による売上向上や効率化によって、相談費用以上の効果を得られる可能性もあります。
予算を決める際は、短期的な費用だけでなく、長期的な関係を築く場合の総額も考慮しましょう。また、成果報酬型のサービスもあるため、自社に最適な料金体系を選択することが重要です。
③自分にとって都合のよい相談方法が設けられているか
相談するためには、相手と時間を合わせなければなりません。相談の仕方も自分に合った相談方法を選ぶことができますが、その相談先や内容によって指定されることもあります。
簡単なものだと電話は一番手軽で、出向く必要がないというメリットがあります。しかし資料などを見せたり詳しいアドバイスを必要としているときは、直接対面でしっかりと相談した方が良いでしょう。
最近では、オンライン会議システムを使った相談も一般的になっています。画面共有で資料を見せながら相談でき、移動時間も不要なため効率的です。
また、相談できる時間帯も重要な要素です。夜間や休日対応が可能な相談先もあれば、平日の営業時間内のみの場合もあります。緊急時の対応についても事前に確認しておきましょう。
④相談相手の実績は豊富か
経営について相談できる場所は多数ありますが、そこに信頼できる相談相手がいない場合もあります。知識はあってもそれまでの実績や経験値が低ければ、柔軟なアドバイスをすることも難しいかもしれません。
その担当者がどれくらい実績があり、自身が悩んでいることに関して経験豊富なのか事前に調べておきましょう。
信頼できる相談相手を見つけるためには、その担当者のレベルや実績だけで判断してはいけません。お互いの倫理観や考え方、人間性も深く関わってきます。人間的に信頼できなければ、本音を打ち明けられないだけでなく、企業としての責任の重い判断をともに考えていくことも難しくなります。
経営に関する問題は、すぐ解決するものはほとんどないため、長期的に信頼し続けられる相手か見極める必要があります。相談相手として簡単に決定しないで、時間をかけても慎重に決めるようにしましょう。
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