LINE公式アカウントを使ったクリニック集客でもっとも多い事故は、「ちょっと言いすぎた」レベルの薬機法・医療広告ガイドライン違反です。本記事は、クリニックのLINE担当者が「明日からそのまま使える」ようにNG例と置換例・社内チェックフローをまとめました。
医療広告ガイドラインの基本|LINEも「広告」になる根拠
「医療広告」とは何か
厚生労働省「医療広告ガイドライン」では、医療広告を次の2要件で定義します。
- 誘引性:受診者を受診へ誘引する意図があること
- 特定性:医業・医療機関・医師名が特定できること
この2要件を満たすものは、チラシ・ホームページ・SNS・動画・DM・LINEを問わず医療広告に該当します。
LINE公式アカウントが規制対象になる理由
LINEは「1対1トーク」のイメージが強いため「広告ではない」と誤解されがちです。しかし以下のように、上記2要件を満たします。
- 一斉配信・ステップ配信は不特定多数への誘引として「広告」に該当
- リッチメニュー・カードタイプ・リッチメッセージも医療機関名が特定できる状態で掲示されるため「広告」
- 友だち追加直後のあいさつメッセージも規制対象
「トーク画面だから個人間の会話」と思いこむとアウトです。
限定解除の3要件(自由診療・美容医療で重要)
「これを書いたらNG」と言われる表現も、下記をすべて満たすと「限定解除」として掲載可能になります。
- 患者が自ら検索・閲覧して接する広告であること(LINEよりもウェブサイトを想定)
- 問い合わせ先(電話番号・予約画面URLなど)を明示すること
- 自由診療については、費用・主なリスク・副作用を記載すること
LINEの1トークルーム内だけで3要件を満たすのは現実的ではないため、しばしばLPやオフィシャルサイトへのリンクを付けて「アクセスして接する広告」に該当させる設計を取ります。
クリニックLINEでよくあるNG表現5カテゴリ×置換例
① 効果・効能の断定表現
医療広告ガイドラインで明確に禁じられているのが「必ず」「絶対」「100%」などの断定表現です。
| NG例 | 置換例(使える表現) |
|---|---|
| 必ず発毛します | 臨床試験では◯◯%の受診者に発毛が見られました(出典付記) |
| 絶対に痩せられます | 多くの患者さまから「検討したい」とご相談いただいております |
| インプラント治療はリスクゼロ | 当クリニックの臨床データでは重大な合併症の報告はありません(ただしリスクはゼロではありません) |
ポイント:「どれくらいの人にどうなったか」を定量データ+出典で示し、合併症・リスクも同時に明記することで、同じメッセージを「演出せず」伝えられます。
② 体験談・口コミの転載
体験談は「広告可能領域」から原則除外されます。Googleマップ・ホットペッパー・エキテン等の口コミをLINEに転載するのはNGです。
| NG例 | 置換例 |
|---|---|
| 「Aさんもサラサラになりました!」という口コミ転載 | クリニックのスタッフが選ぶ「治療の進め方」記事を紹介 |
| 「口コミで高評価!」の記載 | クリニックの診療方針・設備・体制を紹介 |
| インフルエンサーの自費診療体験談を転載 | 医学的に見た治療フローをスタッフが解説(診察助言型) |
③ ビフォーアフター画像
ビフォーアフターの画像は、限定解除3要件に加えて「治療内容・費用・主なリスク・副作用」を全て明記した場合のみ許可されます。他者より優位に見せる加工は一切不可。
| NG例 | 置換例 |
|---|---|
| 明るさ・角度を変えたビフォーアフター | 診察室で同一条件で撮影した画像+費用・リスク表記 |
| イラストで誤認を誘発する効果表現 | 診察室の設備写真、スタッフの詳細紹介 |
| 他院とのビフォーアフター比較 | 自院の診療フロー・体制を紹介(他院に言及せず) |
④ 誇大・最上級表現
「日本一」「トップ」「安心」「全国初」などは、客観的事実で裏付けできない限り使えません。
| NG例 | 置換例 |
|---|---|
| 骨粗鬆症画像診断は日本一 | ◯◯学会(業界団体)「医療設備推薦」認定取得 |
| スタッフ全員が認定医 | 医師◯名中◯名が認定医(2026年◯月現在) |
| 安心・安全な治療を提供 | 厚生労働省認証◯◯を取得・重大事故なし(過去◯年間) |
⑤ 他院・他品との比較優位表現
他医療機関との比較で「トップ」「高品質」とうたうことは明確に禁止されています。
| NG例 | 置換例 |
|---|---|
| 他院より高品質・低価格 | クリニック独自の診療方針・設備を紹介 |
| ランキングサイト掲載をアピール | 診療実績(定量データ)を出典付きで伝える |
| 「もう他院に行かなくていい」 | 「転院を検討中の方も、まず当院のご説明をご確認ください」 |
違反時のリスクと指導事例
行政指導の流れ
- 都道府県・保健所による「医療法上の違反可能性」の調査要請
- 関係資料の提出要請・ヒアリング
- 行政指導(文書指導・口頭指導)
- 改善勧告・改善計画書の提出
- 重大・反復事例では行政処分・検察送致
過去の指導・処分事例
- 美容医療クリニックでビフォーアフター画像にリスク表記がなく、文書指導
- LINEステップ配信で「最安値」「必ず痩せます」と記載し、景品表示法上も問題視
- 口コミサイト転載の体験談をLINE送付し、保健所からチェック要請
LINE公式アカウントそのものの停止リスク
LINE社の「メッセージコミュニケーション仕様」・LINE公式アカウント規約にも「薬機法・関連法令の遵守」が明記されています。公的な違反認定を受けると、アカウント停止・剥奪リスクも生じます。
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クリニック現場の薬機法チェック運用フロー
配信前4ステップ
- 表現チェック:本記事のNG事例5カテゴリと照合
- 限定解除3要件の適用可否判定(自由診療・治療説明・代替表記を含む場合、費用・リスク・副作用をLP側で明示)
- 事実・出典チェック(定量データの出典、認定資格の取得年・期限)
- 医師監修チェック(診療内容・効能表現・リスク記載の医学的妥当性)
監修体制の設計
- 監修医師:院長または分院長などの診療科担当医、氏名・診療科・認定資格を各コンテンツに明記
- 薬機法監修者:薬機法管理者認定・オンライン薬機法管理者などの資格者を起用するのを推奨
- 社内チェック者:LINE担当以外の複数名による交差チェック
Notion / Slack での社内承認フロー
- クリエイターがドラフト作成(Notionテンプレート利用)
- NGチェックリストと照合し「セルフチェック」完了チェックボックスをオン
- 薬機法監修担当へSlack上のフローを走らせ、コメントを付けてもらう
- 院長・院長代行の最終承認をもって配信予約、ステータス「承認済」へ
- 配信後もNotionに「配信ログ」を残し、万一のクレーム対応トラッキングに備える
E-E-A-Tを満たすLINE配信の作り方
Google検索のYMYL(生命・財産に関わる領域)である医療トピックにおいて、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の毀損は長期的なSEO・ブランディングにも直接関わるため、薬機法遵守と同等以上に重要です。
- 経験:「当院では◯◯件の治療実績」「院長◯◯年の診療経験」を記載
- 専門性:認定医資格・所属学会・認定の年次を明示(限定解除の記載説明ルールに準拠)
- 権威性:掲載メディア・検索サイトへの登録、医学会・研修会への登壇実績
- 信頼性:住所・電話番号・医療機関コード・院長名・専任医師名をLP・オフィシャルサイトに明記
LINE配信でも「独自の診療実績」と「出典明示」をセットで伝えることで、違反リスクを下げながら信頼も上がります。
まとめ
LINE公式アカウントを使ったクリニック集客では、「ものを言う」レベルで薬機法・医療広告ガイドラインの規制対象になることを十分認識し、NG表現を5カテゴリで把握し、「そのまま使える置換例」を社内にストックした上で、配信前4ステップのチェックフローと監修体制を動かしましょう。「表現を足し算」して上げる集客と、長く選ばれるクリニックを両立させる鍵は、テキスト以上に「違反を未然に防ぐ社内オペレーション」にあります。
FAQ
LINEの一斉配信だけ限定解除3要件を表記すれば良いですか?
LINEのメッセージ単体では3要件を満たしにくいため、「詳細はこちら」リンクでLPへ送り、LP上で3要件をセットで掲示する設計が現実的です。
口コミサイトの評価をLINEで「ご紹介」として再表示してもダメですか?
LINE中でスクリーンショット転載や「◯◯さんの評価」表記は体験談掲示としてNG。「当院によせられたご質問」として、スタッフが答える形式に変えると使えます。
ビフォーアフター「風」のイラストも違反ですか?
実際の治療効果を冷見させる並べ方・表現だと違反リスクが生じます。診療フローの説明・設備紹介に差し替えるのが安全です。
薬機法チェックはクリエイティブと医師のどちらがやるべきですか?
「表現チェック」はクリエイティブ・コピーライターがチェックリストを使って、「医学的妥当性・リスク記載」は医師がチェック、と役割を分けるのが効率的です。
LINEのステップ配信は規制対象外と言われたのですが?
友だち追加直後のあいさつ・ステップ配信も、医療機関名と同時に掲示された誘引表現と認められるため医療広告に該当します。通常のトーク表現と同じルールで設計してください。
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