現代では、ネット通販は私たちの身近なものとなっていますね。
日本のネット通販の始まりは1990年代頃からといわれています。2000年に差しかかる頃には楽天、YahooやAmazonなど、現代でも人気のインターネットショッピングサービスがスタートしました。
1990年代から2010年代頃の当時はまだスマートフォンも普及しておらず、ネット通販もあまり知られていない時代でしたが、店頭の売上よりもインターネットでの販売は好調であったといわれています。
もちろん、スマートフォンが普及した今は、ネット通販の商品購入者数は年々上がっています。そして、今後もネット通販の市場規模はますます拡大していくこととなるでしょう。
1990年代からスタートしてまだ数年しか経っていないネット通販ですが、商品購入者が増えることに比例して、ネット通販ショップを開業する人も増えています。
ネット通販のショップは実店舗を持たないことから、準備も少なく開業もしやすいです。さらに、ショップを維持する固定費は月1万円程度と安価であるため、運営しやすいのも開業者が増えるポイントの一つです。
しかし、開業が大変しやすいというメリットで手を出しやすいネット通販ですが、恐ろしいことに「ネット通販を始めた人の廃業率は90%」「ネット通販を始めた2年目に約半数が廃業する」と言われています。
廃業しやすい理由としては、「参入障壁が低く、開業する人が多いことが影響し、開業者が多い分ライバルも多い」のです。ネット通販は他の業界よりも市場規模が大きく、競争率が高い業界です。
そのため、“簡単に開業はできるが、簡単には売れない”ことへ苦しみ、失敗をする企業が多いのです。
ネット通販敗を起こさないためにも、「失敗しやすいケース」を見ていきましょう。
ネット通販開業!陥りやすい罠。失敗しやすいケースとは?~事例を通して考えてみよう~
事例1「大手のマネをして客単価を下げて販売したが、売れずに失敗」
A社はネット通販でバッグショップを設立した。ネット通販レディースアパレルの大手ショップであるC社の真似をして、コンセプトはどの年代にも親しまれるよう「ナチュラル」とした。
当初、A社のネット通販での商品販売予定価格は、仕入れ3,000円のバッグを10,000円で販売、1ヵ月100個の売上見込みを立てていた。
が、ネット通販のアパレルショップの相場を分析した結果、自社の受注した商品の系統は、平均価格3,000円程度が相場であることが分かった。
さらに、コンセプトを真似た大手企業は似たバッグを5,000円で販売していた。
このままでは他店から顧客を呼び込むこともできないと思い、大手や他店の真似をし、当初より販売価格を大幅に下げ、4,000円で販売。
大手よりも安価、他社の平均であれば他店にいる顧客も囲えると考えた。そのため、元の予定個数よりも倍の1ヵ月200個売上見込みとした。
しかし、販売から1か月後、売れたのは3個。さらに、大手企業や他店が自社の類似商品をセールで売り始めたではないか。価格は1,500円~1,000円だ。仕入れ値を考えると、価格を下げることはできない。
そして1年後、流行が廃れた大量のバッグだけが残り、A社は廃業を余儀なくされた。
さて、この事例から見えてくる失敗のポイントは「客単価が低い」「大手の真似」「商品の種類が少ない」という3点です。
まず、当初設定していた価格は10,000円でした。しかし、A社は大手や他店の真似をし、当初の予定よりもバッグの価格を大幅に下げて販売を試みました。
ネット通販で失敗しやすい典型的な例の一つは「大手や他店の真似」です。
なぜ、大手や他店の真似が失敗しやすいのか?
それは、他店や大手との類似商品を販売する場合、同じ価格や同じ売り方をしても、広告や宣伝の仕方、商品の仕入れ方や顧客の信用度の部分では勝ち目がないからです。
考えてみてください。
大手企業や運営が長いネットショップは、長年の経験を持っています。
開業したばかりの企業とは比べものにならないほどの大量の生産を行うため、仕入れ先のルートや、格安で商品を生産することもたやすいのです。
始めたばかりのネットショップは敵うはずがないのです。
購入する顧客も、出来たばかりのネットショップより、大手企業のネットショップで購入したほうが「商品がちゃんと届くのか」「写真で見た通りの商品なのか」「対応はよいのか」などの不安はありませんし、どこにでもある、似たような商品であれば、多少高くても信頼と安心感が強いお店で買いたいものです。
急に顧客の信頼を得るのは、難しいです。
そのため、“他社がまだ取り入れていないユーザーが目を引くことをする”ということが大切です。
A社の場合、大手の真似ではないコンセプト(今回の場合であれば「ナチュラルでラグジュアリーな高級感」などのコンセプト)を立て、信頼と高級感を出すため他社とは差をつけた価格設定とし、商品数を増やして顧客購入単価を増やすことが大切でした。
そして、徐々にA社のファンを増やし、顧客ロイヤリティを高め着実な固定客を増やすことがポイントでした。
目先の利益に取らわれ焦ってしまうと失敗のパターンに陥りやすいのです。
事例2「新規顧客獲得に目を向けすぎ、広告宣伝費をかけすぎて失敗」
B社はインターネットで化粧品を売るため、ネットショップを設立。
ネット通販業界は市場規模が大きい業界だと理解していたため、大手や他店には勝てないと思い、“初回無料”を大々的に打ち出し広告宣伝費用を月の売上の6割を投下することに設定した。
広告の宣伝効果もあり、初月は目標新規顧客の獲得と売上目標値を達成することができた。
しかし、半年経ったあたりで新規顧客が増えなくなった。
広告の宣伝効果で顧客を呼び込めることは分かっていたため、新規顧客の獲得を目標に“今なら2カ月分無料”のキャンペーンを始め売上の8割を広告費へ投下した。
しかし、開業1年ほどで新規の顧客が全く増えなくなってしまった。
それどころか、新規顧客は継続購入せず、初回購入もしくは申し込みのみで去ってしまう。
売上は伸びず、2年目には廃業せざるを得なくなった。
B社は「広告費をかけすぎたため失敗した」「顧客ロイヤリティを高めなかった」というケースです。
これは開業したばかりのネットショップが大変陥りやすいパターンです。
B社は新規顧客獲得に目を向け、初回無料やキャンペーンを打ち出しました。そして、広告宣伝費に売上のほとんどを費やしています。
しかし、大手企業の広告宣伝費は、新規事業を始めた企業が追いつく額ではありません。
また、同じ広告を打ち出したとしても、ユーザーは昔からなじみのある大手企業での購入に走るのは心理上仕方がないことです。
キャンペーンの打ち出し方なども、ユーザー心理を長年分析し、実績や経験のある大手企業に敵うはずもありません。
そして、現代のネット通販の場合、SNSの運用などを上手く活用し、広告宣伝費ゼロ経営で成り立っているショップもたくさんあります。
B社は「広告宣伝は打ち出せば必ず新規顧客獲得ができ、その新規顧客が商品を必ず買ってくれる」と、思い込みすぎたことが失敗の原因です。
また、B社は新規顧客獲得ばかりに目を向け、初回を体験した顧客のロイヤリティを高めなかったことも失敗のポイントとなっています。
商品を一度でも試してくれた顧客は、次につながる固定客になる可能性があります。
商品以外の部分での顧客の満足度を高め、リピーターに育てるということに気づけば、失敗は起きなかったのではないでしょうか。
事例では取り上げませんでしたが、あまりにもニッチな商品や商品はよいがコンセプトがずれすぎている場合も失敗のパターンに陥りやすいです。
事業計画をもう一度見直し、開業したネット通販で成功を掴んで下さい。